雨に濡れる紫陽花(アジサイ)を見て、そういえば長崎のおたくさ祭りは今頃だったなあと記憶をたどってみた。長崎では紫陽花のことを「おたくさ」という。長崎出島の商館付医師として来日したドイツ人シーボルトが、最愛の妻お滝さんにちなんで、アジサイに「ハイドランゲア・オタクサ」という学名をつけたのが語源となっている。
長崎の紫陽花の思い出に浸っていたら、福沢剛区議会議員からFacebookの来信があった。消防団のポンプ操法大会の練馬区予選が行われ、練馬消防団第7分団(春日町)が優勝し練馬区代表として東京都大会に出場するという。区議の送ってきた記事は、訓練された消防団員の見事なパフォーマンスを称えた内容だったが、当方から「昔長崎の離島の消防団で団長をしていたので消防と聞くと血が騒ぐ」とコメントしたところ、「先輩が消防のしかも団長をしていたとはおみそれしました」との返信がきた。
長崎県高島町(当時人口5,000人)消防団の団長をしていたのは今から36,7年前のことだ。会社の総務課長になるとほぼ自動的に町の消防団長に就くことになるので、普通の市町村のようにたたき上げの有力者が消防団長になるのとはいささか趣を異にする。全島の住民の大半が会社関係の従業員とその家族であったから、高島町という自治体はいわば会社の事業所の中にあったようなものだった。従って従業員を束ねる立場の総務課長(勤労課長)が消防の元締めになることは全く違和感がなかったわけである。当時の顛末については2010/12の本例会において「年末警戒」の題で発表したので内容は割愛する。
消防団とは119番の消防署とは違う存在だ。団員は本業の仕事を持ちながら消防団活動をする。消防署員をプロとするなら消防団員はアマチュアである。基本的にはボランティアで地域の安全・安心を守るために活動する。火災予防に努め火災発生時には消火活動にあたるほか、風水害や地震などの大規模災害時において救助活動や警戒、避難誘導などに従事する。昔は自営業や個人事業主が多く職住も近接していたので、火災発生時には初期消火の点で重要な役割を担っていた。近年は勤め人(被雇用者)の割合が多くなり、地域に根差した消防団はその存在感が薄れてきている。ピーク時には200万人を数えた全国の消防団員は現在81万人となっている。少子高齢化の影響を受けてもいるようだ。
でも消防団の果たす役割は単なる消防・防災活動だけにとどまらない。団活動をすることにより規律を学び人格形成にも役に立つ。社会貢献をしながら地域社会の安定に寄与している。コロナ禍で拍車がかかった人間関係の希薄化を防ぐためにも必ずや資することになるだろう。若い人は積極的に消防団に参加してほしいものだ。
今回もまた紫陽花を見、消防団を思い出し、つい長崎への追憶の念にとらわれてしまったことになる。
(了)
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